妊娠しておなかがだんだんと目立つようになる妊娠中期には、さまざまな身体の変化がおこります。体調がいつもと違ったり、お腹に違和感を感じたりすると、自宅で様子を見てもよいのか、病院を受診するべきなのか気になる方もいるでしょう。
今回は妊娠中期の赤ちゃんの様子や妊婦さんの身体の変化を紹介します。妊娠中期の過ごし方や気を付けたいポイントなどもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
妊娠中期とは、妊娠16週0日〜妊娠27週6日(5~7ヵ月)までのことです。
一般的に安定期とも呼ばれる時期です。しかし、安定期という言葉は医学用語ではないため、「いつからいつまでが安定期である」というのはありません。胎盤が完成して流産のリスクが減り、つわりも治り始める頃が安定期の目安になります。
毎日を忙しく過ごしていると、自分が今、妊娠何週(何ヵ月)なのかわからなくなってしまうこともあるかもしれません。しかし、妊娠経過を把握することは、妊婦さんと赤ちゃんの健康管理をするために大切なことです。母子手帳や妊娠カレンダーを活用し、妊娠周期の管理を行いましょう。
妊娠中期は赤ちゃんに栄養や酸素を送る「胎盤」が完成し、赤ちゃんがぐっと大きくなる時期です。赤ちゃんの成長にともなって胎動を感じたり、少しずつお腹が大きくなったりと身体の変化がわかるようになります。
ここからは、妊娠中期に現れる主な症状とその理由をまとめました。妊娠中期に現れる症状は時期や程度、感じ方に個人差があります。これから紹介する症状以外にも気になる体調の変化がありましたら、必ずかかりつけの産婦人科医師にご相談ください。
妊娠中期にはホルモンバランスの影響で「水っぽいおりもの」が出る方がいます。おりものの特徴は以下のとおりです。
色 | 白〜やや黄色っぽい色 |
---|---|
性状 | ネバネバしている |
におい | 匂いはほとんどないか、少しすっぱいにおい |
量 | おりものシートにつくか、ティッシュで拭くと付く程度の量 |
妊娠中期には、ホルモンバランスの変化で一時的におりものが増えることがありますが、心配ありません。
カッテージチーズのようなおりものや陰部に痒みがある場合には、何らかの感染症にかかっている可能性があります。感染症にかかると、流産や早産のリスクが高くなったり、産道感染を起こしたりすることもあるので、症状に気づいたら早めに受診しましょう。
また、妊娠中期に破水する妊婦さんもいます。破水すると妊娠継続が難しくなるので、速やかな受診が必要です。破水とおりものは区別がつきづらいため、判断に迷うこともあるでしょう。妊娠中期のおりものと破水との鑑別方法については、次項で詳しく解説します。
破水には次のような特徴があります。
色 | 透明もしくは少し白〜黄色っぽい |
---|---|
性状 | 水のようにサラサラしている |
におい | 生臭い〜甘酢っぱいにおい |
量 |
ドバッと突然大量に流れ出る ちょろちょろと水っぽいものが自分の意思とは関係なく流れ出る |
転んだとき、重いものを持ち上げたとき、排便やくしゃみなどで腹圧がかかったときなどが、破水のきっかけとなることがあります。破水かおりものかは自分では判断がつきません。判断に迷うときには、早めにかかりつけの産婦人科医を受診しましょう。
赤ちゃんの成長とともに、子宮も次第に大きくなります。女性ホルモンの影響や子宮が腸を圧迫することによって便秘がちになることも、妊娠中期の特徴の一つです。
また、骨盤内の血液量の増加や、重力の影響で肛門や陰部に圧力がかかって肛門周囲の血管が圧迫されること、排便時のいきみなどが原因で、痔になる方もいます。
便秘は、食事や運動、排便習慣などの生活習慣を見直すことで、予防や改善ができます。規則正しい生活を心がけ、次のことをできる範囲で行ってみましょう。
症状が改善しない場合は、かかりつけ産婦人科に相談して妊娠中でも服用できる便秘薬を処方してもらうと良いでしょう。
血液は、赤ちゃんに栄養や酸素を送る重要な役割を担うものです。赤ちゃんが大きくなるにつれて妊婦さんの血液量が増えますが、血液成分の中の血漿(けっしょう)が赤血球よりも多くなるため、血液が薄まった状態になり、貧血を発症する場合があります。
今まで貧血になったことがないような人でも、妊娠中は貧血になりやすい傾向にあり、その多くは鉄欠乏性貧血です。妊娠中に貧血が進むと、早産や低出生体重児のリスクが高くなるため、注意が必要です。
妊婦健診の血液検査で貧血かどうかを調べ、必要に応じて鉄剤を服用して貧血を治療します。貧血になると、息切れやめまい、動悸、立ち眩み、ふらつきなどの症状が出ます。これらの症状があるときは、早めに産婦人科医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
皮膚のかゆみや肌荒れがおこることがあります。皮膚のかゆみや肌荒れは、妊娠によるホルモンバランスの変化が関係していると言われていますが、原因ははっきり分かっていません。
そのほかにも、強いかゆみをともなう湿疹が顔や手足にポツポツと出る妊娠性痒疹(にんしんせいようしん)を発症する妊婦さんもいます。かゆみが強いときには、濡れタオルで冷やしたり、乾燥を防ぐためにこまめに保湿したりしましょう。夜も眠れないようなかゆみがあるときには、適切な治療を受けるために、早めにかかりつけ産婦人科医に相談しましょう。
妊娠中の肌荒れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひあわせて参考にしてください。
妊娠中期(5~7ヵ月目)は、お腹の中では赤ちゃんがぐんぐんと成長し、妊婦さんの体にも引き続き変化が起きる時期です。
妊娠中期には、赤ちゃんは具体的にどのように成長していき、また、妊婦さんの身体にはどのような変化があるのでしょうか。ここからは、妊娠中期の赤ちゃんと妊婦さんの身体の変化を1ヵ月ごとに解説します。
妊娠5ヵ月目の赤ちゃんは胎盤よりも大きく成長し、髪の毛や爪が伸び、手足の指もできあがります。羊水の中で手足を活発に動かすようにもなり、早い人では妊娠18週頃から赤ちゃんの動きを「胎動」として感じられるでしょう。
赤ちゃんの顔つきや表情もはっきりしてきます。笑ったり、あくびをしたりなど、タイミングがよいと妊婦健診のエコーで赤ちゃんの豊かな表情を見られることがあるかもしれません。ぜひ楽しみにしていてくださいね。
妊婦さんの体の変化としては、赤ちゃんの成長にともなって子宮も大きくなり、胃や腸への圧迫が強まっていきます。これによって内臓の動きが悪くなり、胃酸の逆流や便秘になりやすい人もいます。便秘予防には、食物繊維の多い食品や発酵食品を摂ること、適度な運動をすること、排便習慣を整えることなど、生活習慣を見直し、規則正しい生活をしましょう。
妊娠6ヵ月目には、赤ちゃんは生まれる時と同じ身体のバランスになります。具体的には、頭、胴体、足がそれぞれ3分の1ずつの新生児特有の体型になり、全身に皮下脂肪がついてきます。
聴覚が発達し始めるのもこの頃です。赤ちゃんは、お腹の中でママの声や呼吸音、心臓の鼓動、胃や腸が動く音なども聞いています。赤ちゃんとコミュニケーションをとるためにもたくさん話しかけてみましょう。
妊娠が進むにつれ、血糖を下げるインスリンの働きが効きにくくなるため、妊娠糖尿病になる方もいます。健康な妊娠経過をたどり、元気な赤ちゃんを産むために、早期発見し妊娠管理が必要です。そのためにも妊婦健診は欠かさず受けるようにしましょう。
妊娠7ヵ月目になると脂肪と筋肉がつき、より赤ちゃんらしくふっくらとした体型になってきます。
羊水の中で手をグーパーしたり指を吸ったりするだけでなく、羊水の中で上下左右に自由に体勢を変えるため、胎動を大きく感じるようになります。寝たり起きたりと、赤ちゃんなりの生活リズムで1日を過ごすようになるため、「今は何をしているのかな」など話しかけてコミュニケーションをとるのもいいですね。
妊婦さんの子宮はさらに大きくなり、胃が圧迫されるため、胸がつかえたような感じになり食事が進まないこともあります。食事は小分けにとるように心がけてみましょう。また、腸が圧迫されることで便秘がちになる方も多くなります。
お腹が大きくなることによって急激にお腹の皮膚が伸び、妊娠線が現れることがあります。妊娠線については、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせて参考にしてください。
妊娠中期(5~7ヵ月目)にはつわりが次第に治まってきて、マタニティライフを楽しむ余裕が出てくる方が多いです。一方で、どんどんと大きくなるお腹に戸惑いや不安を覚えることもあるでしょう。
ここからは、妊娠中期を安心して過ごすために、日常生活で気をつけたいことを4つ紹介します。体調に無理のない範囲で、少しずつ気を付けられるとよいですね。
妊娠中期になるとつわりが落ち着き、妊娠初期よりも食事がすすむ妊婦さんも少なくありません。つわりの反動でたくさん食べ過ぎてしまう方もいますが、体重の増えすぎには注意しましょう。妊娠中の体重増加は、妊娠中の合併症や出産時のリスクが高まるため、適切な体重管理が必要です。
ダイエット志向で太りたくない妊婦さんも増えていますが、赤ちゃんのためにはおすすめできません。厳しい体重管理により必要な栄養が不足してしまい、赤ちゃんの成長が妨げられてしまうからです。その結果、早産や低出生体重児が生まれるリスクが高くなり、さらに幼児期の肥満や、成人してから生活習慣病のリスクが高まることも分かっています。
妊娠中の適正体重は妊娠前の体格や体重によって異なります。適切な体重管理をすることで、さまざまな合併症を防ぐことができます。
体重増加の目安を確認する方法は、以下のとおりです。
<計算式>
BMI = 妊娠前体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例)身長160cm、体重50kgの人のBMI
50(kg)÷ 1.6(m)÷ 1.6(m)= 19.5
妊娠前の体格 | 妊娠前のBMI | 体重増加量の目安 |
---|---|---|
低体重(やせ) | 18.5未満 | 12~15kg |
ふつう | 18.5以上25.0未満 | 10~13kg |
肥満(1度) | 25.0以上30.0未満 | 7~10kg |
肥満(2度以上) | 30.0以上 | 個別対応(上限5㎏までが目安) |
【引用】妊娠前からはじめ妊産婦のための食生活指針 厚生労働省
妊娠中期は赤ちゃんが大きくなるのに伴って、お腹が前に出てくるようになり、腰が反り返った姿勢になります。重心の変化や身体のバランスが崩れるため、腰痛に悩まされる妊婦さんも少なくありません。
腰痛は、姿勢や動作など日常生活の過ごし方が大きく関係しています。妊娠中の腰痛対策としては、次のようなことがあげられます。
なお、ストレッチや運動は、体調が安定しているときに行うようにしましょう。
妊娠中期には、お腹が大きくなることによってお腹の皮膚がピンと張るのを感じたり、子宮が収縮してキューっとする痛みを感じたりすることがあります。これ以外にも、疲れやホルモンバランスなどの理由によって子宮が収縮し、お腹の張りや傷みを感じることもあります。
座ったり横になったりして休むことで治る程度のお腹の張りや痛みは、心配いりません。
張りや痛みが周期的になるような場合や、強くなってくる場合には、切迫流産や切迫早産などが考えられます。また、お腹がカチカチで我慢できないほどの痛みがある場合は、常位胎盤早期剥離が考えられます。これらの症状は赤ちゃんと妊婦さんの命に関わる可能性もあるため、いつもと違うお腹の張りや痛みを自覚する場合は、我慢せず速やかにかかりつけ産婦人科医に相談しましょう。
妊娠中期にはお腹の重みで、妊娠前と重心の取り方やバランスが変わります。また、大きくなったお腹で足元が見えづらくなります。
大きくなったお腹がつっかえて、靴ひもを結ぶタイプのスニーカーは履きにくくなります。また、ヒールが高く安定感のない靴や滑り止めのない靴は、転びやすくなるためおすすめできません。
妊娠中期になってからの靴は、次の基準で選ぶと良いでしょう。
今回は、妊娠中期の特徴や過ごし方のポイントについて解説しました。妊娠中期は安定期とも呼ばれ、つわりや気分のゆらぎも落ち着き、心に余裕がでてくる妊婦さんが増えてくる時期です。
一方で、貧血や感染症、破水、妊娠糖尿病、切迫流産、切迫早産、常位胎盤早期剝離などを発症するリスクもあります。気になることや不安な症状があれば、かかりつけ産婦人科医に相談してみましょう。
妊娠中期に起こりがちな肌荒れ対策には、Milpoche Organics(ミルポッシェオーガニクス)のスキンケア用品がおすすめです。
助産師歴20年以上。総合病院や個人病院などで1,000件以上の分娩の現場を経験した後、 現在は「妊婦さんやママにより寄り添うケアがしたい」という想いから、岡山県にある自身の助産院にて相談や訪問ケアを行う。
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